なぜ春に気分が憂鬱になるのでしょうか?春うつとはどのような症状なのか?そして、春の鬱の原因は何でしょうか?病院に行くべきなのでしょうか?これらの疑問にお答えします。なぜ落ち込んでしまうのか、自分では気づかない原因、心身の不調が現れた場合の対処法について、分かりやすくお伝えします。
目次
春の気分の変化
春の陽気に誘われて、元気いっぱい、ワクワク気分でやる気満々な人もいますが、一方で「春になると憂鬱になる」という人も少なくありません。普段は気にならないことでも落ち込んだり、理由もなく気が重くなったりします。自分でもなぜかわからないけど、「気分が乗らない・・・」「何もする気が起きない・・・」「だるい・・・」と感じることがあります。特に思い当たることがないのに、これらの症状が続いていると、もしかしたら『春うつ』かもしれません。春うつとは、春に現れる鬱の症状のことです。日が長くなり、気候も暖かくなってくると、晴れやかな気持ちになりそうですが、実際には春には鬱になりやすい要因があるのです。
春うつの症状とは?
春の憂鬱、通称『春うつ』の症状は、一般的なうつ病と同じ特徴が見られます。具体的には、
気持ちが落ち着かない
イライラする
不安でドキドキする
心細い感じがする
決断が難しい
やる気が湧かない
漠然とした不安感がある
睡眠に問題がある(寝付きが悪い、眠りが浅い、朝起きられない)
過呼吸になることがある
食欲が減退するか増加する
日常に対する興味が失われる
以前できていたことができなくなる
暖かくなってくる季節に、これらの症状が複数見られるようになった場合、春うつの可能性が高まります。
春に憂鬱になるのはなぜ?その原因は?
春という季節は、日本では新年度の始まりと重なりますね。新年度の時期は、多くの新しいことが待ち受けており、心身ともにそれに追いつこうとするプレッシャーがかかります。最初のうちは頑張っても、ストレスがたまり、心身のバランスが乱れることがあります。また、冬から春への季節の変わり目には、気温の変化によって自律神経が乱れることもあります。これらの要因が重なり、春が訪れると憂鬱な気分になることがあります。
1. 季節の変わり目の木の芽時は憂鬱
3月から4月にかけての季節は、古くから『木の芽時(このめどき・きのめどき)』と呼ばれています。春は植物や虫たちが厳しい冬の寒さを乗り越え、暖かい陽気に誘われて活動的になる季節です。木の芽時とは、樹木が新芽を出す頃のことを指します。植物や虫たちは活発になりますが、人間にとって木の芽時は、昔から「身体的にも精神的にも一番バランスを崩しやすい」とされています。
その理由の代表的なものが「寒暖差」です。春特有の安定しない気温の差が、木の芽時に現れます。一般的に『三寒四温(さんかんしおん)』と呼ばれ、冬季に寒い日が3日ほど続いた後、その後4日ほど温暖な日が続き、また寒くなるというように、7日周期で寒暖が繰り返される現象です。三寒四温は元々は冬の季語でしたが、最近は春先に使われることが多くなっています。
真冬のように寒かった気温が、翌日には急に上がって暖かくなったり、その後また寒くなったりすると、身体が気候の変化についていけなくなります。その結果、脳内の化学物質やホルモンのバランスが乱れ、自律神経が敏感に反応します。この自律神経の乱れが、身体だけでなく心も疲れやすくします。特に、40代以降の女性では、木の芽時の不調に加えて、女性ホルモンのエストロゲンの減少による自律神経の乱れが起こることもあります。
気温や天候の急激な変化は、我々が気づかないうちに身体や心に相当なストレスを与えます。春は、1年の中でも特に寒暖差が激しい季節です。身体が寒暖差に対応するため、交感神経が優位になりっぱなしになり、知らないうちに相当量のエネルギーが消耗され、心にも大きな負担がかかります。
2. 環境の変化で憂鬱
季節の変わり目に気分が沈むのは、気温の変化による自律神経の乱れだけでなく、他にもさまざまな原因があります。
日本では4月が新年度の始まりであり、その時期は「環境の変化」が多い時期でもあります。
3月から4月にかけて、自分の仕事環境が変わることや引っ越しによる転居、子どもの卒業や入学、社会人としてのスタートなど、新しい生活や環境への移行が多く見られます。
新しい環境への適応や大切な人との別れは、緊張や悲しみをもたらすことがあります。これらの変化に対処することは、体力的にも精神的にも大きなストレスとなります。
3. 花粉症の影響で憂鬱
花粉症の季節になると、花粉症の人は憂鬱な気分になることがあります。
都市部では、約半数の人が花粉症であることがわかっています。
花粉症の人は、2月からゴールデンウイークが終わるまでの期間、気分が沈んでしまうことがあります。
4. 天候が憂鬱
春先は曇りがちで雨も多く、気温の変化も大きいため、憂鬱な気分になることがあります。
特に、晴れた日が少ないと、気分が沈んでしまうことがあります。
5. 人間関係が憂鬱
新しい環境では、人間関係を築くことが難しく、馴染めない場合もあります。
周囲が元気で活気に溢れている中で、自分だけが孤立しているような気持ちになることもあります。
人間関係の悩みは、憂鬱な気分を引き起こす要因の一つです。
春のうつ症状は病院に行くべき?
かつての人々は、春特有の「やる気が出ない」「疲れが取れない」「体がだるい」「気分が沈む」といった憂鬱な状態を、「木の芽時が過ぎれば回復する」と一般的に考えていました。そのため、春には通常よりもゆっくりと休むことを心がけていました。私の祖母もお彼岸に訪れる際にはよく、「木の芽時だからね。身体に気をつけなさいよ」と声をかけてくれました。
春に憂鬱な気分になることがあれば、まずは「これは当たり前のこと」と受け入れることが重要です。春のうつ症状が特別なことではなく、同じような気分になる人がいることを認識するだけでも、気持ちが楽になります。規則正しい生活を送る、軽い運動をする、日光を浴びる、気が重くなったら深呼吸をするなど、自分に合ったリラックス方法を見つけることも有効です。
憂鬱な気分になると、ネガティブな思考が先行します。そのような場合は、意識的に別のことに集中することが有効です。好きな映画をまとめて観る、ゲームに没頭するなど、自分の趣味に没頭して気分転換を図ることも大切です。
病院に行く場合は何科?
春の憂鬱な症状である春うつは、通常は春が過ぎると改善されることが多いですが、時には症状が持続することもあります。そのような場合は、早めに医師の診察を受けることが重要です。鬱病は精神科または心療内科で診断されます。心の症状が主であれば精神科、体の症状が主であれば心療内科を受診します。判断に迷った場合は、精神疾患を幅広く扱う精神科を受診することをおすすめします。
春の憂鬱:その症状と意外な原因について
春になると気分が憂鬱になる『春うつ』の症状は、一般的なうつ病と同じです。
季節の変わり目に気分が沈むのは、気温の変化による自律神経の乱れが一因です。
春うつの原因としては、以下のようなものが挙げられます。
季節の変わり目(木の芽時)
環境の変化
花粉症の影響
天候
人間関係
身体が心に追いついてこない状況が重なると、体調も崩れやすく、気分も不安定になります。
春の鬱症状は通常、季節が過ぎれば改善されますが、持続する場合は医療機関を受診することが重要です。
春うつは誰にでも起こり得ます。ストレスは思っている以上に潜在しています。日常的に、気分転換の時間を意識して取り入れることが重要です。焦らず、心をリフレッシュする時間を確保しましょう。